フランス人が大好きな「エスプレッソ」はなぜ少ない?

大のコーヒー好きとして知られるフランス人。10人中7人近くがコーヒーを飲み、その半数以上が1日に何杯もコーヒーを飲んでいるそうですわ。ワインやシャンパン、フロマージュ、バゲットと同じく、コーヒーもフランス人に欠かせないものなのです。中でも人気なのがエスプレッソ。フランスのカフェに立ち寄ると、多くのパリジャン&パリジェンヌがエスプレッソを片手におしゃべりを楽しんでいますわ。

エスプレッソは「デミタスカップ」や「エスプレッソカップ」とも呼ばれ、30〜80 mlのカップに対して30〜50 ml、もっと濃厚なエスプレッソ(Le Ristretto:ル リストレット、Expresso serré:エスプレッソ セレ)になると15〜20 mlしか入っていません。す、すくな〜い!食いしん坊な私は「もっとガブガブ飲みたいわぁ」なんて思ってしまいますが、量の少なさには理由があるようですわ。

エスプレッソは、25~30秒の短時間で圧力をかけ一気に抽出されます。こうすることで、コーヒー豆の雑味などが入らないんですの。もちろん、大量に抽出することも可能ではありますが、そうすると旨味以外も出てしまい、コーヒー本来の旨味だけを味わえなくなるんですって。“大は小を兼ねる”なんてことわざもありますが、エスプレッソに限っては少なめが最適解なんですわね。

フランスのカフェの定番メニュー

せっかくフランスのカフェに入ったら、やはり本場のコーヒーを注文したいものですよね。でも、ここで気をつけたいのが頼み方ですわ。フランスのカフェやレストランで「カフェ」とオーダーすると、普通のエスプレッソが出てきますの。

un café(アン カフェ):普通のカフェ、エスプレッソ
un grand café(アン グラン カフェ)/un double café(アン ドゥブル カフェ):通常のエスプレッソの2倍量のカフェ
un café décaféiné(アン カフェ デカフェイネ):カフェインレスのエスプレッソ
un Ristretto(アン リストレット):エスプレッソの半分の量くらいでさらに濃厚なカフェ
un café noisette(アン カフェヌワゼト):エスプレッソにミルクを少し垂らしたコーヒー

飲みたいメニューがある場合は、上のカタカナ読みを参考にオーダーしてみてくださいませ。濃さやカフェイン量は異なりますが、お値段は普通のエスプレッソと同じもしくは少しだけ高いくらいですわ。メニューカードになくとも作ってくれますわよ。

フランスで日本のコーヒーを飲みたくなったら?

フランスに長期滞在していると、日本の純喫茶で出てくるようなコーヒーが恋しくなる瞬間もありますわよね。そんなときは「un café allongé(アン カフェ アロンジェ)」とオーダーしてみましょう。いわゆる日本のカフェコーヒー、アメリカン・コーヒーが登場しますわ!

このほか、un café viennois(アン カフェ ヴィエノワ)はホイップがたっぷり乗ったウィーン風コーヒー(ウィンナー コーヒー)、un café crème(アン カフェ クレーム)はカフェ・オ・レになりますわ。日本とは少し異なり、フランスでのカフェ・オ・レは“家庭での朝食にいただく飲み物”というイメージですわね。フランス人はカフェ・オ・レをお茶碗やボールサイズのカップに入れて、パンをちょんちょんしながらいただきます。でも……どうしてもこの食べ方、私は好きになれませんの。カフェ・オ・レがドロドロになってしまいますし、なんとな~くお行儀が悪い気がするのです。

ちなみにこのお題についてフランス人の友人に話したところ、「もう、マダム・ジャンビエったら!カフェ・オ・レはクロワッサンと一緒に食べるのがサイコーなのよ」と熱く語っていましたわ。油分の多いジュワッとしたパンとの相性がバツグンなんですって。

ココアやカプチーノ、アイスコーヒーも

フランスのカフェでは、コーヒーのほかに温かいココア「un chocolat chaud(アン ショコラ ショー)」や、エスプレッソで抽出したコーヒーにスチームミルク(蒸気で温めたミルク)とフォームミルク(泡立てたミルク)を合わせたカプチーノ「un cappuccino (アン カプチーノ)」も定番ですわ。

以前はあまり見かけませんでしたが、最近はアイスコーヒー「un café glacé(アン カフェ グラセ)」を出すお店もちらほら。フランスに来られたときは、ぜひ現地の味をいろいろお試しあそばせ。

パンやビスケットを浸すのには実は意味があった!

先ほどお話したとおり、フランス人はボールの中にコーヒーを注ぎ、バゲットやクロワッサン、ときにはビスケットを浸して食べるのが大好きなわけですが、個人的には結構苦手な食べ方ですの。ずいぶんと昔、素敵だなと思っていたフランス人男性が手をべちゃべちゃにして食べているのを目撃し、「申し訳ないけれど、お付き合いはできないわ……」と心の中でお断りしたこともございました(一方的に振ってしまったイケメンな彼、ごめんなさいね!)。

ですが、このクッキーやパンなどをお茶、コーヒー、牛乳などの飲み物に浸す行為にはちゃんと意味があるそうですわ。なんでも、温かい飲み物によって砂糖が溶けると、食感が柔らかくなったり風味が増したりするんですって。ディッピングと呼ばれる技法で、フランス菓子を作るときのテクニックの基にもなっていますわ。

フランスでしか飲めない本場のエスプレッソを

日本でもエスプレッソは楽しめますが、よほどの専門店でない限りは“日本風”の味わいですわ。
ちなみに……、イタリアのエスプレッソはフランスのエスプレッソよりさらに濃厚で、ついてくるのはパンやクッキーではなく、お砂糖ばかりでしたの。お店の人に聞くと、「パンやクッキーがついてくるのはフランスとかベルギーだね」と言われましたわ!
フランスやイタリアで飲まれている濃厚で香り高きエスプレッソを楽しみたい方は、ぜひ現地で本場の一杯を味わってみてくださいませ。ビスケットやクロワッサンを浸して食べるのも“ツウ”っぽくていいですわね。
 
今宵はこれでおしまい。
Excellente soirée! あなたにとって穏やかで明るい毎日でありますように。