え、腐ってないの?どろどろに溶けたカマンベール

チーズの女王という異名を持ち、フランス人だけでなく、日本人にも大人気のカマンベールチーズ。フランスのCamembert(カマンベール)村原産のフロマージュで、軟質チーズの表面に白いカビを生やして熟成させたものです。日本では殺菌後に熟成が進まないようパックや缶に入ったものが販売されていますわよね。そう、だからこそあの“事件”は起こってしまったのです。

海外からの旅行客に大人気なのが、ノルマンディーにあるカマンベール工場。製造過程を見たあとに、作りたてのカマンベールチーズをたくさん買って帰るのがお決まりですわ。作り手に「サイコーに美味しく食べたいなら、決して冷蔵庫に入れないように」と言われたとある日本人女性は、言いつけを忠実に守り、旅行中も家に帰ったあとも常温で保存していたのですが……。

「もしもし、マダム・ジャンビエ聞いて!あのチーズが腐ってたの〜〜!」
電話をかけてきた彼女の話では、常温下で発酵が進んだのかチーズの香りがキョーレツになっていたうえ、どろどろに溶け出して袋の中で個体と液状がミックスされているそう。ちょうど家でパーティをしていたので、電話を切ったあとに家族や友人に彼女の落ち込みぶりを話したのですが、みな口をそろえて「わー羨ましい、美味しそうだわ」と言うではありませんか。フランス人の飽くなき"チーズ探求心"、おそるべし…ですわ。

カマンベールチーズを美味しく保管するためには?

できる限り美味しくいただくため、フランス人はチーズの管理に細心の注意を払っています。とくに大切なのが光や霜、極端な暑さと寒さ、急激な温度変化を避けて、5〜10度の涼しい場所で保存すること。日本では「冷蔵庫で保管し、開封後はすみやかにお召し上がりください」なんて注意書きがありますが、フランスではチーズの熟成を妨げるため冷蔵庫などの低温下での保存はご法度なんですって!(※ちなみに…日本ではくれぐれも注意書きに従ってくださいませ!)

フランス人はどうしても冷蔵庫に入れる場合には食べる30分前には取り出し、常温に戻しておく必要があるのだとか。となると現地での常温保管の指示もあながち間違いではないのですが、先述の旅行者の彼女は各地を巡って長い帰路につく旅であったため、この限りではなかったのでしょう。

同僚ピエールのママ直伝!発酵チーズをリカバリーするレシピ

様々なチーズ

フランス人にとっては発酵が進んだチーズも「美味しそう」になりますが、日本人が食べるとなると少し抵抗があるでしょう。そこで、料理上手で知られる同僚ピエール君のママに発酵が進んだチーズを美味しく食べる方法を聞いてみたのです。

「パン粉をつけて揚げてもいいし、豚肉や牛肉のスライスでチーズを巻いて焼いても美味しいわ。そうそう、溶かしてチーズフォンデュにするのもおすすめよ」

さすがはフランスの家庭料理を極めたママ。発酵が進んだチーズをリカバリーするレシピをすらすらと教えてくださいました。ピエールママ、Merci(メルシー)!

数日後、今度はご機嫌な声で旅行者の彼女から電話がかかってきました。ピエールママ直伝のチーズレシピをホームパーティで振る舞ったところ、招待客から絶賛の嵐だったそう。日本では味わえない濃厚なチーズの旨みに皆さま魅了されていたと話していました。ふぅ、ホッと一安心でございましたわ。

機内でキョーレツな香りを放つモンドール

こちらはチーズ好きの友人のお話。空港でモンドールチーズを買った彼女は意気揚々と帰りの飛行機に搭乗したのですが、数時間経ったころ頭上からなんだかキョーレツな香りがするではありませんか。恐る恐る開けてみると、密封していたはずの袋が少し開いていて香りが漏れている様子。狭い機内でのチーズ臭にさぞかし慌てたことでしょう……かと思いきや、彼女はスタッフを引き留めて一言。
「ワインくださいな!」

さすがに周囲の迷惑になるので二重袋で密封し直したそうですが、残り香でワインを2杯楽しんだとか。チーズ好きらしいエピソードで思わず笑ってしまいましたわ。

本場のチーズはお土産としても大人気ですが、機内で香りが漏れてしまうとタイヘンな事態になる可能性もございます。最近は真空パックにしてくれるお店もありますが、どうぞ皆さまお持ち帰りのときには十分ご注意あそばせ。

今宵はこれでおしまい。
Excellente soirée! あなたにとって穏やかで明るい毎日でありますように。

写真提供:Mme.JM