日本人のスマホはスリたちにとってS級品

パリには、胸が高鳴るようなオシャレなカフェが立ち並んでいますのよ。写真を撮ったり、ショーケースを観に行ったりする中で、何気なくテーブルにスマートフォンをポンッと──。実はそれ、かなり危険ですわ。とにかくフランスのスリは俊敏。持ち主がテーブルにいたとしても、おしゃべりに夢中になっている間に静かに近づきサッと奪って逃げるなんていうこともあるあるですのよ。

中には、まだあどけない表情をした幼いスリも。日本から来た友人とカフェで昔話に花を咲かせていたとき、A4用紙を掲げた少年が目の前に立ち、何やら早口で一方的にしゃべりだしましたの。そのとき作動したのです、私の危機察知レーダーが!

「〇〇ちゃん、スマホが危ないわ!」と叫んで彼女のスマホを握った瞬間、私の手に重なったのは少年のスベスベな手。かくして、コンマ数秒で友人のスマホを死守したわけでございますわ。

余談ですが、最新機種を持っていることの多い日本人は、外国人観光客の中でも特に狙われやすいのだそう。以前、中古スマホを販売しているおじさまに「いくらで売っているの?」と聞いたところ、「500~900€(約7万~約12万7,000円)だよ」と教えてくれましたわ。なるほど、思ったよりお高めですわね。つまり、日本人のスマホはスリたちにとってSランク級ですのよ。

もちろん、スリの獲物はスマホだけではありませんわ。イスの背中や足元、空いているイスなどにカバンを置いておくと持っていかれたり、中身を抜かれたりする可能性がありますわ。持ち物は必ず体に触れさせたうえで、目の届く場所に置いておきましょうね。

美術館でも!?スリとの静かなるバトルが勃発

ルーブルやオルセーなど、フランスには有名な作品を収蔵する美術館も多いもの。でも、ガイドさんの説明に耳を傾けている瞬間にも、背後ではスリが獲物を狙っていますわよ。スリたちは、まるで美術品を鑑賞しているかのような振る舞いで観光客のグループに近づきますわ。ときには、ご丁寧にオーディオガイドを耳につけていることも…。

以前、見るからにスリらしき男のいる現場に居合わせたとき、全く知らない日本人グループに対しても「泥棒がいるのでお気をつけくださいね」と注意したことがありましたの。観光客の皆さまもハッとしたご様子で、結果的にスリは狙っていた日本人から盗むことができなかったわけですが……ふと見ると、スリが私に鋭い眼光を向けているではありませんか。もちろん、私も「観光客をなめるなよ!」という気迫を込めて、フランスの国鳥である“雄鶏”のごとく睨み返しましたの。私とスリとの静かなるバトルでございました。

美術館だからといって油断は禁物。「外ポケットに貴重品は入れない」「カバンは体にくっつけて口を開けたままにしない」などを意識しながら、安全に美術館めぐりを楽しんでくださいませ。

マダム・ジャンビエ流!スリに遭わないおまじない

スリに遭ってしまうと、せっかくのフランス旅行が台無しになってしまいますわ。また来たいと思えるような素敵な思い出にするためにも、最後にとっておきのおまじないを皆さまに授けますわよ。

持ち物はカラダに“ふ”れさせておく
“ラ”ブルの事例や知人からの体験談を聞いて予習しておく
カバ“ン”の口はしっかり閉じる
“ス”リに隙を見せない

囲んだ文字を順に読むとあら不思議、「フ・ラ・ン・ス」になって覚えやすいでしょ。えっ?無理があるですって?細かいことを気にしすぎないのがマダム・ジャンビエ流のおまじないですのよ、オホホ。

怖がり過ぎずに旅を満喫してほしいですが、常に防犯意識は忘れずに。上のおまじないを思い出しながら素敵な滞在にしてくださいませ。スリにはいろいろな手口があるので、情報収集しておくに越したことはありませんわ。ということで、次回後編もスリの手口についてもう少しお話しさせていただきますわね。

今宵はこれでおしまい。
Excellente soirée! あなたにとって穏やかで明るい毎日でありますように。