海外旅行先のケガや病気はとにかくお金がかかる

フランスの病院

“まさか海外旅行中にケガや病気なんて”と思われるかもしれませんが、実は旅行者が病院にかかるケースって意外と多いんですのよ。病院探しに困るだけでなく、慣れない言語にあたふたして最後には請求額に唖然……なんて方もたくさん見てきましたの。今回は、私がインバウンド関連の仕事(日本からお客様をお迎えする仕事)に就いていた頃、実際に目の当たりにした3つのエピソードを紹介させていただきますわね。

海外旅行中はストレスで精神的な不調が起こることも

海外旅行はワクワクするものですが、普段と異なる環境下での生活になるので大なり小なりストレスがかかるもの。日本からフランスへ行くとなると旅路も長く、言葉も通じないので精神的に不安な状況になってしまいますわよね。

団体旅行におひとりで参加されていたとある女性も、そんなストレスから体調を崩してしまい、ついには離団することに。現地で入院後もなかなか日本に帰国できる状況にならず、ご家族がすぐにフランスに迎えに来られるわけでもなかったため結局60日以上もフランスの病院に入院されていましたわ。

日本のご家族からも強い退院希望が出たため、2ヶ月後にようやく医師1名、看護師2名付き添いのもと日本に帰国できたわけですが、荷物の返送を手伝ったアシスタントの費用に送料、フランスでの入院費、医師・看護師の日当・往復航空券・日本の滞在費など、トータルするとそれはそれは莫大な費用になってしまいましたわ。幸いにも海外旅行保険をかけていたため一部は保険から支払われましたが、それでも日本のご家族にはウン百万円の負担があったとか。おそろしい話でございますわね……。

置き引き犯に転ばされて骨折

以前のコラムでフランスの犯罪事情についてお話ししましたが、とある素敵なご夫妻は置き引き泥棒に遭い、階段から突き飛ばされてご主人が手を骨折されましたわ。ボルトを入れる手術と入院が必要になり、おふたりはグループ旅行から離団。慣れない土地にもかかわらず、奥さまが片道40分かかる病院へ毎日通われ、献身的にサポートする様子が印象的でしたわね。トラブルに遭っても笑顔を忘れなかったおふたりは、退院後にその町をゆっくり観光してから日本に帰られたそうですわ。

めでたしめでたし──なんてほっこりとは終わりませんことよ。入院から退院まではわずか1週間でしたが、医療費を確認したところフランス人の平均月給の4倍以上の費用がかかっていましたわ。こちらも運良く海外旅行保険に入っていたため払い戻されたそうですが、もし加入していなかったらと思うと顔面蒼白ものですわね……。

血まみれで逃げ出してしまった学生さん

「もしもし、マダム・ジャンビエ?例の男の子が行方不明なんだけど!」
真夜中にそんな電話がかかってきたこともありました。

いなくなったのは、事故に遭って入院されていた学生さん。同じ頃に警察から血まみれの若い日本人男性が歩いていると通報があり、私も急いで駆けつけましたわ。どうやら彼は海外旅行保険をかけていなかったそうで、日本にいた友人から「ソッチで入院したら莫大な治療費がかかるぞ」と言われて焦ってしまい、自分の体についていた管を引っこ抜いて、血を流しながら病院を抜け出したと言います。なんとも無謀な……と突っ込みましたが、たしかに怯える気持ちもわかりますわ。

結局現地の病院に再入院して無事に回復されたのですが、医療費はお友達の言葉どおり莫大な額に。請求は日本にまで及び、結局ご家族が銀行からお金を借りて支払ったそうですわ。

AAA(明るく、安心、安全)な旅行を

「クレジットカードに海外旅行保険が含まれているから大丈夫」とおっしゃる方も多いのですが、今回のケースのように病院で治療や入院が必要になった場合のことを考えるとやっぱり別に保険をかけておくに越したことはないですわね。そのくらい海外の医療費は高く、100万円オーバーなんていうのもザラですの。クレジットカードの海外保険特約がある場合には、病院の指定はないのか、入院は対象になるのか、スリや置き引きはカバーされるのかなど、要件や対象を詳しく確認しておきましょうね。

なによりも明るく、安心、安全な旅になることが大切ですわ。パリの街並みに囲まれるとつい浮かれてしまいますが、とにかく自分たちの身を守りながら楽しい時間を過ごしてくださいませ。

今宵はこれでおしまい。
Excellente soirée! あなたにとって穏やかで明るい毎日でありますように。

写真提供:Mme.JM