フランス人は日本人の10倍チーズを食べる

ワインやシャンパンのお供に欠かせないものといえば、そう!フロマージュでございます。日本ではチーズケーキをイメージされる方も多いですが、本来は牛やヒツジなどの乳から作られるチーズ全般を指す言葉ですのよ。一人当たりの年間消費量は日本人の約10倍に当たる24kg。全仏酪農経済センター(CNIEL)の発表では、フランスには1,200種を超えるフロマージュがあるんですって!これだけでフランス人がどれほどフロマージュを愛しているのか、お分かりいただけましたわね。

春のフロマージュはフレッシュな味わい

そんなフロマージュですが、実は種類ごとに食べ頃の季節があるってご存知かしら?

春は、熟成の少ないフレッシュチーズの全盛期。牛、ヤギ、ヒツジのミルクが持つ風味やさっぱりとしたコクを堪能できる季節ですわ。レストランにはカマンベールやサン・マルセラン、シャウルスなど、白カビのソフトチーズのほか、ウォッシュタイプのソフトチーズ、ほとんど熟成を必要としないセミハードタイプのプレスチーズなどが並びますの。

中でも私を魅了するのが、ヤギのフロマージュ。風味を凝縮させたカベクー、噛むほどに旨みが広がるペラルドン──あぁ、考えただけでヨダレが!

暑い夏でもチーズは美味しい

暑い時期なのにフロマージュを食べても大丈夫なの?とよく聞かれますが、未調理のプレスチーズも完全に成熟しているので安全にいただけますのよ。夏にはクリーミーなサン・ネクテール、若いカンタル、爽やかな味わいのオッソー・イラティ、さらには香ばしい風味が特徴のルブロションなんかも味わえますわ。専門店では、前年の夏に作られたコンテ、アボンダンスなどのチーズもよく目にしますわね。暑さを感じながら、冷たいシャンパンとチーズに舌鼓。なんとも幸せな時間でございます。

フロマージュの素晴らしさを再発見する秋

夏の干ばつが終わると、大地に“最初の雨”が降り注ぎますわ。草木が密度と豊かさを取り戻し、牛乳がより力強くて個性的な味わいになるこの季節。春と同じチーズが並びますが、風味はまるっきり別ものになり、皮を洗ったチーズはよりコク深く、濃厚でガツンと響くような強烈な旨みを放ちますわ。フランス人の中でも生粋のチーズ好きは、毎年秋を待ち望んでいるほどです。私のお気に入りはなんといっても4~5か月前に作られたブルーチーズ!フルムやロックフォールなど、旬のクルミとも相性抜群ですの。

冬はフランス版おでん、ラクレットで暖をとる

寒い冬が訪れると、夏のミルクや秋の再成長期に作られた中熟期のチーズが食べ頃を迎えますわ。そうそう、人もチーズも年を重ねるほどに“美味しく”なるんですって。トム、サレールやライオル、18 か月のコンテ、ボーフォールなどの熟成期間の長いチーズが、私と同じく魅惑的な美味しさであなたを魅了することでしょう。ウフフ。

そして冬といえば、フランス版おでん「ラクレット」を家族や友人と囲みますわ。一家に1台あるラクレットマシンを出してあっつあつのチーズを頬張るわけですが、なにがうれしいって、準備が簡単なことです!私も疲れた夜には「今日はあなたの大好きなラクレットよ」なんてダーリンにほほえみながら、お手軽な料理でラクをさせていただきますのよ。日本でも美味しいチーズが手に入ったときはぜひお試しあれ!

たいへん!私としたことが、大好きなモンドールの紹介を忘れておりました。モンドールはそのままでも食べられますが、箱に入れて直接焼いて食べることができますの。生産できるのは8 月 15 日~ 3 月 15 日、販売は9 月 10 日~ 5 月 10 日と決められており、この限定感も惹かれるポイントですわね。

原料となるミルクがとれた時期や熟成具合など、季節ごとにチーズの味わいはさまざま。フランスに来られたときは、ぜひその時々のフロマージュをご堪能あそばせ。

フランス人が好きなフロマージュランキング

食卓を彩る様々なフロマージュ

毎日たくさんのフロマージュを食べているフランス人。大変多くの種類がございますが、フランス人にはどれが人気だと思われます?
フランスでも人気のチーズ専門ウェブサイト「LA BOITE DE FROMAGER」によりますと、人気ランキングは下記の通りだそうですわ。

〈フロマージュ人気ランキング〉
1位 カマンベール
2位 コンテ
3位 エメンタール
4位 ロックフォール
5位 ビッシュ・パイエ(ヤギのチーズ)
6位 ルブロション
7位 ブリ
8位 グリュイエール
9位 サン・ネクテール
10位 プチバスク

堂々の1位に輝いたのは、やっぱりカマンベールチーズ!日本人でも好きな方が多いですわよね。

ちなみに…、カマンベール・ド・ノルマンディ(Camembert de Normandie)は1983年にAOC(原産地呼称統制)に選定されたので、カマンベール・ド・ノルマンディを名乗るためには、厳格な伝統的な製法(低温殺菌されていない生乳を原料とするなど)の踏襲をしなければなりませんの。現在はEU統一のAOP(保護原産地呼称)に変わっていますが、原料乳の品種の規定はされていないようで、ノルマン種、プリムホルシュタイン種の乳が使われているそうですわ!

シャンパンはシャンパーニュ地方で製造されていないとシャンパンと名乗れませんわよね。それはシャンパン製造者がすぐにその商標登録、特許のようなものを申請したからです。
ですが、カマンベールチーズはノルマンディーのカマンベール村による商標登録が遅れたため、あちらこちらでカマンベールチーズを作って、カマンベールチーズとして売られています。唯一、商標登録やブランド化ができているのが、カマンベール・ド・ノルマンディなんですの!

ノルマンディー地方のカマンベール村でチーズ工場を見学して、カマンベールチーズをカバンいっぱいに買って帰る旅行者も少なくありません。フランス人の消費もこれに比例していて、カマンベールやエメンタールなどがよく食べられていますわ。

…あらやだ!チーズのお話ばかりしていたのですっかりお腹が空いてしまいましたわ。お気に入りのワインを開けて、フロマージュをいただくとしましょう。まだまだお話ししたいのですが、この続きは後編の方で。

今宵はこれでおしまい。
Excellente soirée! あなたにとって穏やかで明るい毎日でありますように。

写真提供:Mme.JM