年間100億本も消費する、バゲット大国フランス

袋に入ったバゲット

320本──。突然ですが、この数字、なにかお分かりになりますか?
正解は、フランスで1秒間に消費されているバゲットの数です。そんなバカな!と思われるかもしれませんが、さすがはバゲット大国。年間で100億本ものバゲットが生産され、消費されていると予想されるそうですの。かくいう私も、もうバゲットなしの生活は考えられませんわ。だからこそ、最近のバゲットの値上がりには悩まされていますのよ…!

バゲットは昨今のインフレの影響によってどんどん値上がりしておりますわ。街のパン屋さんも努力してくださっていますが、それでも値上げは免れないでしょうね…。バゲット革命が起こらないように祈りながら、明日もお気に入りの店に足を運ぶとしましょう。

フランスにはパンにまつわる法律も

皿に乗ったバゲット

フランスでは規格外のバゲットを売ると大罪に…というのはジョークですが、サイズや重さに関しては規格がございますの。普通のバゲットの重さは250~300g、長さは55〜70cmであるのが一般的らしいですわ。

そういえば、私がフランスへ移住してきたばかりの1998年ごろ。初めてパン屋でバゲットを買ったところ、袋もなにもなく手渡しされてとても驚きましたわ。「もしかしてこの場で食べると思われたのかしら!?」と慌てて袋をお願いしたところ、今度は5センチぐらいの小さな紙でバゲットを持ち、「ここを持てばいいのよ」と。親指と中指に全神経を集中させながら、そろりそろりと帰りましたわ…!

バゲットの袋

ちなみに、現在はほとんどのお店でバゲットを袋に入れてくれるようになりましたわ。思い返せばユーロへの通貨変更があったとき、さりげな~くバゲットが値上がりして、なんとな〜く袋に入れられるようになった気がしますの。バゲットの値上げは痛手でしたが、袋が用意されたのは思わぬ特典でございましたわね。

大統領が食べるバゲットはコンテストで決める

パリの15区にあるダミアン・ドゥダン(Damien Dedun)さんのパン屋さんでは、とある特別なバゲットが作られていますの。宮殿御用達、つまりマクロン大統領のいるエリゼ宮に届けられるバゲットですわ。

フランスでは「La meilleure baguette de Paris」というコンクールが年に一度開催されていて、誰が最高のバゲットを作っているのかを競い合いますの。見た目や味はもちろん、調理方法やパン粉の触感、パンの切り方など審査基準はさまざまですわ!優勝すると、賞金とともに1年間エリゼ宮の御用達パン屋としてバゲットをおさめる資格が与えられますの。

この大会では、先ほどお話した“バゲットの規格”を遵守する必要があって、それより小さくても大きくてもダメ。実はこれがかなり難しいらしいですわ…!実際に私が通うパン屋さんもわずか1cmオーバーで失格となりましたの。外はカリカリ、中はモチふわで本当に美味しいのよ…と、私まで下唇をかんでくやしがったものですわ。

優勝すると知名度が上がり、売れ行きも伸びますが、決して楽ばかりではありませんわ。なんたって一般に販売しているパン以外に1日150本から200本のバゲットをエリゼ宮におさめなければならないんですから。実際に2022年に優勝したダミアン・ドゥダンのお店では、早朝から生地を仕込み、多い日には2,000本を焼き続けるのだそう。大のパン好きの私ですが、早起きにめっぽう弱いため必然的に務まらないでしょう。フランスのパン屋さん、労働力になれなくてごめんなさい。私はパンをたくさん食べて、パン屋さんを応援する側に立ちますわ…!

世界無形文化遺産をバリバリかじろう

切り分けられたバゲット

最後に、フランス旅行で美味しいパンを見つけるための豆知識をひとつ。冷凍パンや工場製品ではないものを見分けるために、「Le Boulanger Artisan(レ ブランジェ アルティザン)」や「Artisan Boulanger(アルティザン ブランジェ)」という言葉を覚えておきましょう。お店の看板やラベルに上の言葉がつづられていたら、イチからそのお店で作られた“本物”という証ですのよ。フランスに来られたときは、ぜひ世界無形文化遺産をバリバリとかじってみてくださいませ。

Excellente soirée! あなたにとって穏やかで明るい毎日でありますように。

写真提供:Mme.JM