思いがけず出会った「空き家」は“新しい価値の想像”の宝庫。

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光山さんが、空き家と出会ったきっかけを教えていただけますか?

光山和弥さんのサムネイル

実家が創業150年以上の石材店で、いずれ家業を継ぐことが念頭にあったので、経験を積むため大学を卒業後は、エンジンメーカーで営業職の仕事に就きました。その時に、会社員をやりながら何か新しいことにチャレンジしたいと思い立って、「やりたいこと100リスト」をつくり、週末に絶対にこなすことを習慣にしていました。例えば、バンジージャンプに挑戦したり、ヒッチハイクをしたり、筋トレしてフィジークの大会に出場したりなど、とにかくいろいろと。これで、「行動する力」がついて、勢いにもつながりました。やりたいことが具体化していくことが面白かったですね。

そんな中、親戚から、「有馬温泉に古い空き家を所有していて困っているのだが一回見てみないか?」という話がありました。
その空き家は70年以上も放置されているとのこと。当時は空き家に関する知識は全くなかったのですが、そんな空き家は見たこともなかったですし、単純に「面白そうだな」と思い、まず見に行ったんです。

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やりたいこと100リストを実行したり、"縁"のなかった空き家を「面白そう」と感じたり。光山さんは、もともとポジティブ思考が強いほうですか?

光山和弥さんのサムネイル

どちらかというと、そうですね。「どうせ無理」とか「知らないから手を出さない」とか、ネガティブに考えても何も始まらないですし。

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確かに!その有馬温泉の空き家をどのように変えたのでしょうか。
ご自身の中で新たな気づきはありましたか?

光山和弥さんのサムネイル

その空き家は昔、男子寮だったようで、残置物も非常に多かったのですが、購入して知り合いの工務店さんに、家の躯体だけを残すスケルトンリフォームをしてもらいました。スケルトンにすることで、借主が自由にリノベーションしてもらえると思ったんで。
その後オーダーメイドの家具屋さんに貸し出すことができ、地域が活性していくのを目の当たりにして、空き家が新しい価値を持って再生していく醍醐味を、身をもって感じることができました。

再生する過程に立ち会っている中で、日本では空き家が年々増え続けていること、空き家を放置し続けることにより建物の崩壊が起こりトラブルが発生するなど、空き家に関する問題が多岐にわたって存在することを知りました。

(注釈)
※建物を支える基礎や柱などの骨組み部分のこと

仕事場内の光山和弥さん
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なるほど。それがきっかけで「空き家の会」をつくられたのですか?

光山和弥さんのサムネイル

有馬温泉の空き家の再生過程をインスタグラムで発信していたのですが、なにぶん素人なので、いろんな人の意見をもっと聞けたらいいなと単純に思ったんです。それで、建築家や不動産業界の方など専門知識を持つプロと空き家問題に直面している方が、知識や情報を共有したり、意見交換できる場、出会いの場ができたら少しでも空き家問題が解決できるんじゃないかと思い、2020年5月、Facebookコミュニティ「空き家の会」を立ち上げました。

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「空き家の会」ではどのような活動をしているのですか?

光山和弥さんのサムネイル

Facebook上で情報共有や意見交換を行うことはもちろんですが、建築士・設計士さん、士業の先生を講師に招いてオンラインでセミナーを開催したり、DIY体験会、会員さんが施工したリノベーション物件の見学会などオフ会も行ったりしています。

ご参加いただいた方同士で仲良くなって新しいコミュニティが生まれたりするんですよ。それが、次の空き家再生につながっていくと、すごく嬉しいですね。

「空き家問題を解決したい」「空き家を活用して地域のために何かしたい」など熱意のある方が多くて、みなさんからたくさんの刺激を受けて、自分の強みが何なのかを模索しながら私自身が成長していると実感しています。

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本業をもちながら活動を続けるのは、大変ではないですか?

光山和弥さんのサムネイル

月〜金は石材店で働いているので、“空き家”の活動は週末や仕事の合間の時間に限られますが、空き家に新しい価値をふきこむ過程に純粋な喜びややりがいを感じていますし、空き家を通じてさまざまな学びや仲間を得る喜びは、何ものにも代えがたいですね。
本業があるからこそ、本業とは全く異なる視点で空き家プロジェクトに楽しくポジティブに関わることができていると思います。

スマホを確認する光山和弥さん
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「空き家の会」で、今後挑戦したいことはどんなことですか?

光山和弥さんのサムネイル

今後は、「空き家を貸したい人」と「借りたい人」がマッチングできるような "空き家活かしたい人バンク"をつくるなど、より発展的な活動になるよう充実させていきたいですね。

若者たちの挑戦を地域の活性化につなげたい。
シェアカフェ「KIKKAKE PLACE」への思い。

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地元の神戸市内でも空き店舗を活用され、シェアカフェ「KIKKAKE PLACE」をオープンされたそうですね。きっかけを教えてください。

光山和弥さんのサムネイル

神戸市の空き家情報を見ていたときに、たまたま平野商店街に空き店舗を見つけました。平野商店街は、三宮から車で10分程度の立地でアクセスは悪くないのですが、歩いている人も少なくご高齢の方が多い印象です。有馬温泉の空き家をリノベーションしたときのように、この場所を活用して商店街を活性化し、他の地域からも足を運んでもらえるような場所であったり、何かに挑戦したい人を手助けできるような"きっかけ"となる場所になればいいなと思い、2021年11月から準備を始め、2022年2月にオープンしました。

1階と2階合わせて7部屋あるので、いくつものお店や施設がある複合施設のようにしたいなと思って。現在は、1階でシェアカフェとパーソナルジムを運営しています。めちゃくちゃおしゃれでいいなと思う複合施設のコンセプトも参考にしたりしています。

「KIKKAKE PLACE」で話をする光山和弥さん
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「KIKKAKE PLACE」オープンまでに、どのような方々とどのように準備をされてきたのですか?

光山和弥さんのサムネイル

「空き家の会」で出会ったカフェ専門のインフルエンサーにカフェづくりに興味ある人を募ってもらい、その方たちと一緒につくり上げました。空き家を再生させたい私と、自分でデザインしたカフェをつくりたいインフルエンサーさんとの想いがマッチしたプロジェクトになりました。

学生には、能動的に活動してもらう場として、夢を後押しする場として使っていただきたいと思って、市内の製菓専門学校にチラシを配ったり、直接DMでよびかけたりもしました。

また、この場所に愛着をもってもらえるよう、地域の子どもたちに参加してもらう「壁塗りDIY体験」のイベントを行いました。みんな楽しんで作業してくれて嬉しかったですね。

「KIKKAKE PLACE」の壁塗りDIYの様子
「KIKKAKE PLACE」は、地域の子どもたちに壁塗りDIY体験として改装工事に参加してもらうなど、さまざまな人に関わっていただいて2022年2月22日(オープンは2022年3月17日)に完成した。自分のお店を持つ体験をして人生の「キッカケ」をつくる起業体験場所として提供している。
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「KIKKAKE PLACE」は、地域の皆さんにとってどのような場になってきていますか?また、今後の予定は?

光山和弥さんのサムネイル

店主が変わるシェアカフェを運営しているので、起業体験として母校である流通科学大学の学生さんたちに飲食店経営にチャレンジの場として提供したり、地域の施設とコラボして子ども食堂を開いたりなど、「だれかのやりたいことを叶える場」「人が集まる場」になってきていていることを実感しています。
私自身も、有名な和菓子卸と契約できて、ここで月に2、3回販売しているんですよ。和菓子販売を通して地域の方々と交流できるのが楽しいですね。

2023年2月には、シェアカフェの隣にパーソナルジムをオープンしました。ご近所の方々の健康づくりに役立てればと願っています。
今後は2階をコワーキングスペースにしたり、隣の部屋をイベントスペースやマルシェを開催したりなど新しいことにチャレンジしながら、この場所からワクワクが発信できる、地域の人が楽しくなるよう商店街を盛り上げていきたいと思います。

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ありがとうございます。最後に若い世代の読者に向けてのアドバイスをお願いします。

光山和弥さんのサムネイル

小さくていいので成功体験を積み重ねることが大切だと思います。「気になるあのお店に行きたい」とかでもいいんです。思ったらすぐに行動することが、新しい発見につながり、小さな成功体験を少しずつ積み重ねていくことで、自分のやりたいことに出会えるかもしれません。

それから、失敗を恐れない事。世の中には人の失敗を馬鹿にしたり、面白がったりする人もいますが、みんなすぐに忘れるから大丈夫(笑)。

あと、趣味など好きなことを続けて自分の強みにし、それを増やしていくのもいいと思います。自分の得意なこと、好きなこと、ほかの人に比べて優位なポイントを極める努力を続けることが、自身の価値をあげていくことができるのではないでしょうか。