レビュー
どんな企業でも「新規事業」と無縁ではいられない。これからサービスを育てていこうとするスタートアップはもちろん、「既存事業」で安定している大企業も、0から価値を生み出す試みなくして生き残ることはできない。だが、新規事業を成長させることは簡単ではない。何から着手していいかわからず、一人の天才の出現を夢見てしまう人が多いかもしれない。
本書は、500ケース以上の事業を研究した結果をまとめあげ、成功の再現性を限りなく上げるための「チーム論」と「方法論」を提示する。キーワードは「異能の掛け算」だ。著者はキャリアのほとんどを新規事業一筋で過ごし、数々の新規事業の立ち上げに関わってきた井上一鷹氏だ。井上氏は、メディアで自身の経験を100回以上語る中で、あることに気がついた。「事業開発の経験者は、とにかく精神論ばかり語っている」と。ビジョンやパッションは新規事業で重要なものだが、再現可能なサイエンスの部分もあるはずだ。
経験を通じてしか体得できないと思われている事業開発に再現性をもたらす。そんな本書は、新規事業開発に頭を抱えるビジネスパーソンにうってつけの一冊だ。サイエンスできる部分を素早く習得することで、自分たちにしか出せない価値に集中することができる。価値創造に夢中になれる人や組織を増やすことこそ、本書の願いなのだ。