レビュー
「人生は、勉強だから」
この言葉を両親から繰り返し聞いて要約者は育った(あと記憶しているのは「嘘は泥棒の始まり」)。学校で教えてもらう勉強と、図書館で本を手にする勉強を分けることなく、学ぶことを日常に溶け込ませる習慣がついたのは、両親の教育方針の賜物だろう。
赤面ものの親自慢を紹介したのは、両親の言葉と「探究のための独学の力は、人生全体を生きる力」という著者のメッセージとに、強い類似性を見たためである。著者は、「走ること=考えること」「足跡=本を書いた人の思考の痕跡」とたとえつつ、「思考力は長い月日をかけて少しずつ訓練されるもの」という信念を、本書で繰り返し述べている。
「幸せに生きるために、何が必要なのか?」「これからの社会に求められる価値とは?」という問いは、人生・社会一般における根本的な問題であり、1つのシンプルな真理となるような答えは知られていない。しかし、仕事と生活を忙しく過ごす日々の合間に、誰もの頭にふと浮かぶのは、こうした哲学的な大きな問いだ。こうした問いに「答えなんてないから考えても無駄」とそっぽを向くのか、「自分なりに答えを見つけてみよう」と探究の道を歩み始めるのか。
タイトルに「独学」とあるが、先人の足跡である本や他者との対話を通じ、共に考えるための効果的な手引きを著者は伝えてくれている。「考えるとは何か?」を徹底的に考えている哲学者と一緒に、人生をより豊かにするための勉強を始めてみるのはいかがだろうか。