レビュー
「こんな仕事、やる意味あるんだろうか」「なんでこんな仕事をやらなきゃいけないんだ」。
会社で仕事をしていて、そんなふうに思ったことが一度もない、と言える人はいないのではないだろうか。
誰も見ない書類の作成、間違いだらけの文書の修正、魅力のない商品のプロモーション。そういった仕事に上司や同僚も違和感を持ちながら、今まで通り「仕事はそういうもの」と受け入れ、忙しくこなす日々。要約者は、そんな仕事1つもしたくないが、いらない仕事をなくすための仕事をつくるというのも気が引ける。
本書はそういった「クソどうでもいい仕事=ブルシット・ジョブ」がなぜ増えるのか、という謎に焦点をあて、個人、社会経済、政治の次元で解明していく。
本書の著者は、人類学者のデヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』日本版の翻訳者の一人である。『ブルシット・ジョブ』は442ページと分量があるため読むのに根気がいるが、本書はその入門書にあたり、短時間で要点をつかみやすい構成になっている。
十分な報酬をもらえる仕事に就いたものの、何の役にも立っていないことに傷つき、苦しんでいる。しかしどうしたらいいのかわからない。本書は、そんな人達の問題を言語化してくれる。ブルシット・ジョブに違和感を覚える人たちに「自分だけじゃないんだ」という安心感を与えてくれる一冊だ。