著者
佐宮圭(さみや けい)
1964年生まれ。兵庫県尼崎市出身。早稲田大学第一文学部卒業。学研『大人の科学マガジン』などのサイエンスライターとして、日経BP『日経クロストレンド』などでビジネスライターとして活躍。2010年『鶴田錦史伝―大正、昭和、平成を駆け抜けた男装の天才女流琵琶師の生涯』で第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。『さわり』として刊行された。
【要点1】
光の速さは、乗り物に乗った状態で計測しても地面で計測しても変わらない。これを「光速不変の原理」という。動いているときと地面にいるときで光の速さが変わらないのは、時間が相対的だからである。自分から相対的に見て動いている相手の時間は、自分の時間よりも流れる速度が遅くなる。
【要点2】
重力は時空を歪めることができ、この歪みが波のように伝わることを「重力波」と呼ぶ。2015年9月に初めて重力波を観測したことで、人類はこれまで知ることのできなかった宇宙誕生時の情報を観測できる可能性に大きく近づいた。
レビュー
この本のタイトルを前に、まず、「16歳から相対性理論なんてわかるのだろうか?」という疑問がよぎる。この本は、そんな読者の予想を軽々と越えてしまった。
本書は、難しい相対性理論を大真面目に解説したものというよりも、高校生を中心とした青春物語のなかからその理論が自然と理解できるように工夫されたものである。主人公の鈴木数馬は、陸上部に所属する高校1年生。ふとしたきっかけで「なぜ光の速さは変わらないのか」について疑問をもつ。ちょっと複雑な家庭事情や、学校ならではの人間関係に悩まされ、それに巻き込まれながらも、光から重力、そしてアインシュタインの「相対性理論」へと理解を深めていく。学校の授業でもなく、だれに強要されるでもない。あるのは科学への純粋な興味と好奇心だけである。
本書の中で印象深いのは、「知識は限られているが、想像力はこの世界を包み込む」というアインシュタインの言葉だ。一人の人間が持ちうる知識はわずかだが、複数人が集まって想像力を働かせ、成し遂げようとすることは、大きな力を生む。研究を続ける世界中の科学者たちを突き動かしているのは、アインシュタインの残した相対性理論と、そこから想像できる新しい世界への好奇心なのかもしれない。
科学は苦手だとか、相対性理論がいったい何の役に立つのかと感じている方にこそ、本書をおすすめしたい。読み進めるうちに、夏休みという言葉の響きが懐かしいものとなっている立派な大人たちにも、学ぶことの楽しさを思い出させてくれることは間違いない。
佐宮圭(さみや けい)
1964年生まれ。兵庫県尼崎市出身。早稲田大学第一文学部卒業。学研『大人の科学マガジン』などのサイエンスライターとして、日経BP『日経クロストレンド』などでビジネスライターとして活躍。2010年『鶴田錦史伝―大正、昭和、平成を駆け抜けた男装の天才女流琵琶師の生涯』で第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。『さわり』として刊行された。
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