著者
中屋敷 均 (なかやしき ひとし)
1964年、福岡県生まれ。1987年京都大学農学部農林生物学科卒業。博士(農学)。現在、神戸大学大学院農学研究科教授(細胞機能構造学)。専門分野は、植物や糸状菌を材料にした染色体外因子(ウイルスやトランスポゾン)の研究。著書に『生命のからくり』(講談社現代新書)、『ウイルスは生きている』(同/2016年講談社科学出版賞受賞)がある。趣味は、将棋、山歩き、テニス等。
【要点1】
科学の「光」と非科学の「闇」のあいだには、さまざまな「薄闇」が存在している。
【要点2】
現代において科学はあたかも「神託」のごとく、合意形成のための説明として機能している。しかし科学的な正しさとわかりやすい説明を両立させるのは難しい。
【要点3】
科学と非科学の違いは、批判を受け入れるオープンな態度をとれるかどうかにかかっている。
【要点4】
科学の進歩は生物の進化のように、ランダムな変異によって生じる。一見無駄とも思える科学者の“いびつな情熱”こそが、それを生み出す。
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レビュー
現代社会を生きる私たちは、人類が長い時間と膨大な労力をかけて探究してきた科学的知識の恩恵を享受している。だがその基盤となる知識については、確かな理解を得ているわけではない。科学は難しく、厳しくて、特別だ。だからこそ科学は「正しい」と感じられるし、科学的に保証されたものは正しく特別なものに映る。しかし科学はなぜ正しく特別なのか。それを考えないまま無批判に科学を受け入れるのは非科学的な態度ということが、本書を読むとよく理解できるはずだ。
科学的な正しさを確かめることや、非科学的なものとの間に線を引くことは、決して簡単ではない。いまのところ科学的に不可能とされていることや非科学的とされているものが、あるとき科学的に可能となったり証明されたりすることもある。わからないことをわからないままにして諦めるのではなく、説明しようと試みる人間の意志が、人間の知識と社会を進歩させてきたのだ。「難しいから」と理解を放棄し、科学者の言うことや科学を装う言説を無批判に受け入れてしまっては、それこそ非科学的態度である。
確かに科学は難しい。しかし著者のリラックスした語り口を通して、科学的な姿勢とは何か、非科学との境界線はどこにあるのか、科学を進歩させるものは何かといったといった論点を、肩の力を抜いて考えてみてはどうだろうか。
中屋敷 均 (なかやしき ひとし)
1964年、福岡県生まれ。1987年京都大学農学部農林生物学科卒業。博士(農学)。現在、神戸大学大学院農学研究科教授(細胞機能構造学)。専門分野は、植物や糸状菌を材料にした染色体外因子(ウイルスやトランスポゾン)の研究。著書に『生命のからくり』(講談社現代新書)、『ウイルスは生きている』(同/2016年講談社科学出版賞受賞)がある。趣味は、将棋、山歩き、テニス等。
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