レビュー
「バズる」とは一般的に、「(主にネットを中心に)爆発的に広まること」を意味する。だから本書についても「テクニックを駆使して一時的に大きな拡散を狙うもの」と思っていた。しかしそれは大きな誤解であった。というのも本書はまさに「そういうことをするのが苦手な人」のために、「バズる文章の書き方」を伝えてくれるものだからだ。
著者が書店でアルバイトをしながら、おすすめ本の紹介記事をブログに書いたときのことだ。小説の批評というニッチな分野にもかかわらず、執筆したブログ記事が大きくバズった。著者もはじめはなぜバズったのか不思議に思ったそうだが、何度もバズったあと、ある結論にたどり着く。それは「文章の内容よりもみんなに楽しんでもらうことを優先し、好感を持ってもらおうと工夫していたから」というものだった。
バズることを狙ってちょっと過激な文章を書くよりも、「みんなに好きになってもらえる文章」を書けるようになることが、バズる文章への近道となる――著者の解説とともに作家たちの文章を読んでいくと、それぞれの文章の楽しさの法則が解き明かされ、なるほどと何回も唸らされた。
「バズる」というキャッチーな言葉は、ひょっとするとターゲットを選ぶかもしれない。だが流行に関係なく、「言葉の発信力」を上げたい人にとって、じつに有益な一冊なのは間違いない。