1990年頃のスタイルを今に

「レトロカスタム」は、現代のクルマを1990年頃のイメージにするカスタマイズの手法。ボディの四角いミニバンやSUV、軽自動車をベースに、ボディカラーやバンパー、ヘッドライトを当時風にアレンジするものです。

具体的にカスタマイズポイントは以下のとおり。

■バンパーのブラック化、メッキ化
■エンブレムの旧ロゴ化
■ヘッドライトの変更(黒枠化や丸型化)
■スチールホイール化
■ボディカラーの変更(ベージュなどナチュラル系ソリッドに)

このようなカスタマイズ手法は、これまでも軽バンなどで行われていました。それが、平成レトロやアウトドアブームの到来とともに、2020年頃からファミリー向けのミニバンやSUVに拡大していきました。

濃紺のSUVカー

今では、「レトロカスタム」を施して販売する中古車も多く、誰もが手軽にレトロスタイルのクルマを手にできるようになっています。中古車業者としても、少し古いクルマをリメイクすることで人気と価値を上げることができるため、「レトロカスタム」のメリットは大きいのです。

本格的なものでは、カスタムパーツ業者によって制作される、ボディパネルやヘッドライト、グリルなどのキットを装着し、もとの車種のイメージを感じさせない仕上がりに。

ボディ形状はそのままでも、ボディカラーやバンパーの塗装、ホイール交換などで、雰囲気を変える手法もあります。いずれにしてもポイントは、ボディカラー、バンパー、ホイールの3点にあると言えるでしょう。

富士山が見えるキャンプ場に止まるRVカー

現代のクルマで一般的な、ボディラインに溶け込むようなヘッドライトやバンパーではなく、あえて汎用の丸型や角型のヘッドライトにしたり、昔のウレタンバンパーのように塗装をせず樹脂の質感そのままの黒バンパー化したりすることで、レトロな雰囲気になります。

車の丸型ヘッドライト

ホイールも、凝ったデザインのアルミホイールはなく、あえて商用車のようなスチールホイール(鉄チンと呼ぶ)にするとレトロ感を出すことができます。スチールホイールをホワイトやブラックにペイントするスタイルもよく見られます。

タイヤ交換でボルトを締め直している様子

ドアミラーやドアハンドルなどをメッキ仕上げにするのも、レトロさを感じさせるポイントのひとつ。ボディカラーは、ベージュやモスグリーンのソリッド(メタリックでない)カラーで、ナチュラルさやギア感(道具感)を出すのが、定番スタイル。ルーフキャリア(ルーフラック)も、ギア感やアウトドア感を演出するパーツとして、用いられます。

インテリアはどうする?

外観の「レトロカスタム」は、イメージのつくところでしょう。では、内装はどうでしょう?こちらもレトロなイメージを演出するカスタマイズがあります。

もっとも大きく雰囲気を変えるのは、シートの素材とカラーです。とはいえ、シートを交換することは簡単ではないため、シートカバーが活躍します。

茶色の革張りの車内

今は車種ごとに設計され、装着するとあたかも元からそうであったかのような仕上がりに見せるシートカバーが発売されています。

その多くはレザー調で、カラーのオーダーができる製品も多く、シートのサイドとセンターで色を変えることができたり、ステッチやパイピング(縁取り)のカラーを選べたり、自分好みのデザインに仕上げることができます。

ステッチの入った革布

「レトロカスタム」の定番は、ベージュや茶色ですが、モノトーンで落ち着いた雰囲気にするもよし、一部にブルーなどのアクセントカラーを入れることで、ポップなイメージにすることもよし。一般的にレザー調のシートカバーは、高級感を演出するためのアイテムですが、「レトロカスタム」の場合は、あえてテカテカしたビニールレザーのような素材でチープさを出すのも味わいとなります。

また、フロアマットも手軽に雰囲気を変えられるアイテムで、こちらもオーダーメイドによりチェック柄などを購入することが可能です。

モノグラム柄のフロアマットが敷かれた助手席

その他、インストルメントパネル(計器盤)やドアの内張りなどに木目調パネルを装着するのも、よく行われるカスタム。同時に、ハンドル(ステアリングホイール)やシフトノブをウッド製などに交換する人もいますが、現代のクルマはエアバッグが装着されているため、エアバッグを取り外すことになるハンドル交換はあまりオススメできません。

クラシックなハンドルに交換された運転席

「レトロカスタム」で注意すべきことはある?

シートカバーやホイール交換程度ならば、取り立てて大きく注意すべきことはないでしょう。

ヘッドライトなどボディパーツを交換する場合は、信頼のおける業者に施工してもらうことが大事。ボディやバンパーの塗装も同様です。見た目のクオリティだけでなく、経年劣化の心配もありますから、これも信頼のおける業者で予算をケチらずに行うことが、重要でしょう。

自分でカスタマイズしていく場合、まずは作業時の安全を第一に。そして、走行中に緩みや脱落がないように、しっかり丁寧に装着することが必要となります。いずれにしても、不明点がある場合は、「こんな感じで大丈夫だろう」と思わずに、知識やノウハウのある人にアドバイスを求めるようにしてください。

レトロカスタムで「自分のクルマ」をさらに楽しく

運転席側ドアが開かれて中が見える軽自動車

レトロテイストが好きな人にもアウトドアギアが好きな人にも人気な「レトロカスタム」。カスタマイズ済みの車両を購入して手軽に楽しむのも、自分でコツコツと仕上げていくのも、どちらも楽しいでしょう。クルマ好きでなくても楽しめる「レトロカスタム」、ぜひ注目してみてください!

編集:田村恵美(PASSERBY GRAFFICS)+type-e

文:木谷宗義/type-e、