自然のなかに身を置くキャンプでは、ときに環境の変化に対応していくチカラが必要になります。ここでは、北アルプスの山小屋「西穂山荘」の支配人で気象予報士の資格をもつ粟澤徹さんに質問! 快適にキャンプができる目安の気温は?突然の雨や雷にはどう対処する?キャンプを楽しむために知っておきたい、お天気対策をお届けします。

Q.快適にキャンプができる最低気温の目安は?

森の中にある湖畔の近くに設営されたテント

A.一般的な春〜秋のキャンプであれば、5℃がひとつの目安になるというのが個人的な意見です。とはいえ、暑さや寒さの感じ方は人によって大きく異なるので、まずは自分が寒がりなのか、暑がりなのかを知り、それぞれが判断するのが基本です。

寒さを凌ぐための知識を身につけておくことも、大切なポイントだと思います。たとえば、「寒くて眠れない」という場合でも、寝袋にインナーシーツを入れたり、ダウンジャケットを着て寝袋に入ったりすると、ずいぶん感じ方が変わる。家から厚手のブランケットを1枚余分に持って行くだけで、対応できる気温の幅が広がります。

寒い日に外ですごしているときには、積極的にレインウエアを活用してください。「レインウエアは、雨のときに着るもの」と考える方もいると思いますが、じつは防寒や防風にも役に立ちます。風速が1m増すと体感温度は1℃下がるので、とくに風が強い日にはレインウエアをフル活用するようにしましょう。

また、寒さを感じるときは体を内側から温めることも有効です。山岳救助では、低体温症の恐れのある方に、お湯で割ったスポーツドリンクを飲ませることもあります。また、大人よりも地表近くで活動する子どもは、暑さや寒さの影響を受けやすいもの。子どもと一緒にキャンプをするときは、気温の変化によりいっそう注意を払ってほしいですね。

Q.キャンプ場で急に風が強くなってきたときは?

強風に吹かれているテント

A.強風時のキャンプには、いろいろなリスクがあります。まずは、キャンプ場に行く前に天気予報を確認しておくことが大前提です。

そのうえで、想定外に風が強くなった場合は、焚き火やテントの撤収も考える必要があります。たとえば風速3mを超えると焚き火から火の粉が飛ばされてしまい、山火事などにつながるリスクがあります。周囲に落ち葉などの燃えやすいものがある際は、より慎重に判断したいですね。

一般的なファミリーテントの場合、風速5mを超えるとポールが損傷してしまう可能性が高まると思います。出入り口を風下にする、ガイロープをしっかり張る、固定力が高く壊れにくい鍛造ペグを使うなど、基本的な防風対策は必須。それでもテントが煽られてしまう場合は、無理せず撤収することを検討しましょう。

Q.キャンプ場で突然の雷。危険を避けるための対処法は?

山の上に設営されたテントと遠くに見える落雷

A.キャンプ場で雷が落ちやすいのは、高い木やポールなどの鋭利な金属です。ゴロゴロという音が聞こえたら、そのようなものから遠ざかるようにしましょう。テントやタープの下、東屋なども安全ではありません。

雷が鳴ったときに安全なのは 建物や車などの“空間の中”。仮に被雷したとしても、雷が壁を伝って地面に落ちていくからです。そのため、キャンプ場で雷鳴が聞こえたら、管理棟などのしっかりした建物や自分の車に避難するようにしましょう。

雷は雲の真下だけではなく、横にも走ります。その射程範囲は10kmほどと言われていますが、じつはこの範囲は「ゴロゴロ」という音が聞こえる範囲とほぼおなじ。だから、山の稜線で登山道整備などを行なっているときに「ゴロゴロ」となると、私たちはいち目散に避難をします。もちろん、雷との距離が遠ければ落雷の可能性は低いですが、キャンプ場でも「ゴロゴロ」が聞こえたら充分注意してください。

気象庁の「雷ナウキャスト」では、雷の激しさや落雷の可能性を1kmメッシュごとに解析し、10分ごとに1時間先までの予報を行なっているので非常に参考になります。また、AMラジオを聴いていると、一定の範囲内で雷が発生しているときには「バリバリ」という雑音が入ります。この雑音が連続的に聞こえるときは、すぐ近くで雷が発生しているので、避難するようにしてください。

Q.大雨注意報、大雨警報、大雨特別警報……。どのタイミングで撤収する?

大雨が降ってるキャンプサイトとテントの様子

A.警報や特別警報が出ている状況は、すでにかなりのピンチ。撤収のタイミングとしては遅すぎます。大雨注意報やその前に発令される「局地的大雨」の情報が出たときに、撤収を考えるようにしましょう。

ちなみに気象庁は、さまざまな種類の注意報を出しています。キャンプの場合、大雨注意報や洪水注意報、強風注意報には充分注意を払わなければいけませんが、一方で濃霧注意報や雷注意報の場合は、少し考えてから行動することが大切です。たとえば濃霧注意報が出ているときに無理にキャンプ場から移動してしまうと、見通しの悪さが原因となって事故になってしまうかもしれません。また、雷注意報は真夏であればほぼ毎日発令されています。前述の「雷ナウキャスト」などを使って、より詳細な情報を調べてから行動したほうがよいですね。

Q.雨や風が強いときの、サイト選びのコツは?

秋のキャンプ場でテントを設営している男性

A.おなじキャンプ場のなかでも、サイトによって地形や周囲の環境は異なります。雨や風などが強いときは、それぞれに対応できるサイトを選ぶようにしたいですね。

たとえば山に近いキャンプ場の場合、見晴らしのよい場所というのは風の通り道になっていることが多い。風が弱い日なら眺望がよく気持ちいいですが、強風の日には避けるようにしたいですね。周囲に多くの木々があるサイトだと、それらが防風林になってくれるため、すごしやすいと思います。ただし、風が強すぎる日は倒木や枝が落ちてくる可能性があるので要注意です。

川や湖のキャンプ場で雨が降っているときは、やはり水辺から離れたサイトを選びたいですね。また、キャンプ場内で窪地になっている場所は雨がたまりやすいので、浸水のリスクが。小高くなっているようなサイトのほうが安心です。また、大雨のあとは土砂崩れのリスクもあるので、斜面近くのサイトも注意が必要です。

Q.天気のことを学ぶなら、どんな方法がおすすめ?

iPadで天気情報を検索している様子

A.私自身、天気の勉強を始めたときは、とても苦労しました。すばらしい専門書は世の中に数多くあるのですが、最初から難しい内容の本を手に取ると、専門用語が多すぎて数ページで挫折してしまいます。

そこでおすすめしたいのが、子ども向けの本です。イラストや図解を使って天気のしくみが紹介されているので、とてもわかりやすいのです。子ども向けの本を最初から最後までしっかり読めば、天気の仕組みを包括的に理解できますし、次の一歩にもつながると思います。

キャンプには、雨や風、寒さや暑さがつきものです。事前に天気予報をチェックしたうえで、しっかり準備しておくことはもちろん、急な天候の変化に対応できる知識や技術が、自然をより深く楽しむための大切なポイントです。キャンプの経験を重ねることで自分なりの対処法を見つけたり、家にいるときに天気の仕組みを学んだり……。天気とうまく付き合っていくためのスキルを、少しずつ身につけていきたいですね。

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